昨夜(7日)、穂高から新宿バスタまで直行バスで帰宅いたしました。
まずは会場をご案内。
ギャラリーを入ってすぐの部屋はバザールさながら。ここは後で見ていただくことにして、
2番目の部屋へと左折。
突き当たりには石本寛治さん所蔵のオスマン帝国時代の刺しゅう。

トルコの博物館でも、同様のものが飾られているとても貴重なもの。
手の込んだ刺しゅうは、長い大タオルの両端に施されています。トルコのドラマ「オスマン帝国外伝」で、ハーレム内の女性たちが刺しゅうしている場面がよく出てきます。たぶんスルタン(皇帝)に献上するためのもの。
左手には民族衣装、
右の台の上にはエフェの帽子。エフェとは任侠と訳していますが、いざという時に村人を助ける自警団のようなものらしい。日本の千人針のように周囲の女性が無事を願ってモチーフを作り、帽子に縫いつけます。
円や半円の”エフェ”と名付けたモチーフがありますが、男性用にも使えます。
展示部屋に入りましょう。
あっと驚く色とりどりのスカーフ。『縁飾り(オヤ)の見本帳』に載せた石本家のコレクションです。

3つにグループ分けして飾りました。
右はイーネオヤ。
イーネとは針のことで、結びコブを2つ作るとコブの間に糸の山ができる。それを並べたり積み重ねたりして三角を作る。これが基本で、揃うようになると立体も作れます。蝶々、葡萄、カモミール・・・トウガラシには意味があり「私は怒っています」、兵隊のモチーフは夫や息子が兵隊に行っている人が被る、三色菫は「夫が浮気をしています」(先日ギュリンさんから聞いた情報)等と説明しました。
中はボンジュック(ビーズ)オヤ。
ビーズの重みで頭に被りやすい。上段の白いガーゼはお祈りの時、畑仕事、お風呂上がりなどに被る実用的なもの。去年トルコに行ったときに出くわしたメッカ巡礼帰りの婦人たちがほとんど白いスカーフを被っていたことを思い出します。
ビーズでも連続模様だけでなく、桑の実、いちご、パセリ、虫、床屋の鏡・・・
「なるほどねー」「言われてみればそうだわ」との感想が聞こえます。
奥のグループはその他を集めました。

かぎ針のトゥーオヤ、タティングレースのメキッキオヤ、ヘアピンレースのフィルケテオヤ。
かぎ針のモチーフに固い輪の芯が入っているのはセルムオヤ。
セルムを辞書でひくと「血清」。見本帳編集時、血清とは?乳白色だから???どうしても理解できずに、トルコ在住の智子さんに手芸店に行って聞いてもらったところ、点滴の管を切ったものだと判明。5mm以下の輪はセルム。大きな輪はハルカ。日本ではニットリングとして知られています。ハマナカさんのニットリングでも8mmが最小で、私たちとしては5mmの日本製リングを待望。
ビーズの代わりにスパイスのクローブ(丁子)を使っているオヤも。
結婚式の前に花嫁は良い香りのクローブを浮かべたお風呂に入る。ふやけたクローブに針を刺してオヤを作る。良い香りもする(今でも)し、しまっておくと虫除けにもなります。
右の壁面を堪能していただいた次は、

壁面にはカメラマン大滝吉春さんのトルコ取材旅行時の写真パネルを飾っていただきました。
中央の絵皿にはトルコの国花チューリップがカーネーションとバラとともに描かれています。原種は先が尖った花びらをしていて、原産はトルコ。この細長いチューリップモチーフはタイルやクッションなどいろいろなところに使われています。
両側にはイーネオヤのモチーフ約40個をひも状にしてあるもの。トルコではこのようにモチーフが売られています。(この会場では販売はしません)
下に飾ったのはトルココーヒーを淹れるジェズベとデミタスサイズのコーヒーカップ。
こうして〜〜コーヒーを湧かし、こうして飲み、こうして逆さにして〜〜コーヒー占いができます、とシャドー実演。
余談ですが、私が石本家で試したところ、こんなん出ました!

「王様のような立派な男性が見える」と私が言ったら、すかさず、「その前に険しい山が立ちはだかっている」とクマさん。

飲み物ついでに、チャイダンルックという二段式のやかんで、こうしてチャイグラスに注ぎます。
トルコ大使館から取り寄せたトルコ案内のカタログもご自由に見ていただきました。
ひも状のボンジュックオヤが光を通してきれい。

上段はエーゲ海地方の無地のシルクが特徴。
チューリップのモチーフはコレ、こちらはカーネーション。
リンゴの花は赤ちゃんができたしるし。
アーモンドをつけて好きな男性の前に行くと「好きです」の気持ちを伝える。
左端の瓶に飾って特別扱いしたピンクのカーネーションは100年前のアンティーク。
写真では切れてしまいましたが、ブルーは「好色男のひげ」のオヤがついています。
たいていの方はここでニヤリ😏
部屋の中央には、石本さんのトルコ絨毯を敷き、トルコランプやCRKが作ったキャノビーで雰囲気作り。

低いテーブル上にもスカーフを並べ、ひも状のオヤを吊るしました。
展示につきもののCRKのガーランドはいつも人気。
右奥のテーブルでワークショップ。
石本智恵子さんがいらっしゃらない時は、クマさんか私のどちらかがお客さまに説明していました。
以上でひとまずご案内を終えます。『見本帳』と見合わせながら想像していただけると幸いです。
通常、壁面に絵画や写真フレームを並べて飾るだけのギャラリー。
北谷さんならではの展示には設営に3日間かけた沢山の工夫と苦労がありました。
いつものように長年続いている良いチームワークだからこそ成し遂げたもの。
もっと大勢の方に見ていただきたかった、というのが正直な感想ですが、安曇野で展示会をしたいとの石本さんの長年の希望は叶えてさしあげられたと思います。